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2026-06-18

国別メッセージアプリ利用実態と、日本の観光事業者が対応すべきチャネル戦略

日本の観光事業者がインバウンド対応においてどのコミュニケーションチャネルを優先すべきかを判断するには、旅行者の送客元国・地域におけるメッセージアプリの普及実態を把握することが前提となります。本稿では、主要市場における利用状況を整理し、実務的なチャネル選定の考え方を提示します。

1. グローバルメッセージアプリの勢力分布

2024年時点でのグローバルなメッセージアプリ利用者数を見ると、WhatsAppが30億人以上(180カ国以上)と首位に立ちます(Mobilus CXブランディングテックラボ「2026年版 世界のメッセージングアプリ事情」)。世界人口の37%以上が日常的に使用しているとされており、特定の地域・文化圏に依存せずグローバルに普及している点で他のアプリと質的に異なります。

第2位はWeChatの14.1億人ですが、その利用の大半は中国国内および海外在住の中国系ユーザーに集中しており、地理的普及の広さという観点ではWhatsAppとは性格が異なります。Telegramは約9.5億人(2025年予測)で第3位に位置しますが、ロシア・中東・東欧圏への偏在が見られます。

こうした全体像を踏まえた上で、訪日外国人の送客元上位市場における各国のアプリ実態を個別に検討することが実務上の判断基準となります。

2. 主要市場別メッセージアプリ利用状況

ヨーロッパ圏(ドイツ・英国・スペイン・フランス・イタリア)

観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年7-9月期)において、一人あたり消費額の上位を占めるのはドイツ(435,512円)・英国(360,054円)・スペイン(354,793円)・フランス・イタリアといったヨーロッパ諸国です。

これらの国々ではWhatsAppが事実上の標準メッセージインフラとして機能しています。スペインおよびドイツでは普及率が90%を超えており(ourownbrand.co 2026年)、英国でも約80%が利用しています。ヨーロッパ全体として、WhatsAppはLINEが日本において果たすのと同等の役割を持ちます。ビジネス連絡・友人間のコミュニケーション・旅行中の問い合わせのいずれにおいても、WhatsAppがデフォルトチャネルです。

インド

インドはスマートフォンユーザーの97%がWhatsAppを利用しており(DataReportal Q2 2025)、世界最大のWhatsApp市場です。訪日インド人旅行者数は近年増加傾向にあり、消費額も高水準にあることから、インド市場向けのWhatsApp対応の優先度は高いと評価できます。

アメリカ・カナダ・オーストラリア

Meta社がMark Zuckerberg CEOのQ1 2025決算説明会で明らかにしたところでは、米国のWhatsAppユーザー数は1億人を突破し、拡大基調にあります。ただし北米市場ではiMessageおよびSMSとの競合関係が残存しており、ヨーロッパほどのWhatsApp一強構造にはなっていません。オーストラリアについてもWhatsAppが主要ツールとして機能しています。

韓国

DataReportalの2026年韓国レポートによれば、KakaoTalkのMAUは4,910万人で、人口の95.1%・インターネットユーザーの97.1%に相当します(DataReportal 2026 South Korea)。国内のコミュニケーションインフラとしてはKakaoTalkが圧倒的な地位を占めています。

ただし、海外渡航経験のある韓国人旅行者に関しては、状況が異なります。国際旅行においては現地の施設や海外の友人との連絡手段としてWhatsAppを併用するケースが一般的であり、実際に訪日韓国人旅行者からWhatsApp経由での問い合わせが届くことは珍しくありません。パスポートを持って海外に出る旅行者は、渡航先でのコミュニケーションにWhatsAppを活用する傾向があります。

中国

中国国内ではネットワーク規制によりWeChatが標準インフラとして機能しており、WeChatとQQを合算した利用者数は約19億人に達します。中国国内に向けた情報発信においてはWeChatが有効です。

一方、中国人旅行者が日本を訪れる際の状況は異なります。海外渡航中は規制環境が変わるため、WhatsAppを使用する中国人旅行者は一定数存在します。特に海外旅行の経験が豊富な層や、海外在住の友人・知人を持つ旅行者はWhatsAppをインストール済みであるケースが多く、訪日中の施設への問い合わせにWhatsAppを使用することがあります。また、WhatsAppはリンクからアプリをダウンロードできる構造のため、来日後に初めて導入するケースも想定されます。

ベトナム

訪日ベトナム人は消費額ランキングの上位に位置しています。WhatsAppの利用は一定程度ありますが、ローカルアプリのZaloも国内では高い普及率を持ちます。WhatsAppで一定のカバレッジは確保できますが、ベトナム市場を重点ターゲットとする場合はZaloの補完的対応も検討対象となります。

日本(参考)

DataReportalの2026年日本レポートによれば、LINEのMAUは9,900万人(2025年末時点)で、人口の80.5%・インターネットユーザーの92.6%に相当します。日本国内の事業者連絡・顧客対応においてはLINEが標準チャネルですが、訪日外国人との通信においてLINEが機能するのは台湾・タイなど一部の地域に限定されます。

3. 訪日外国人市場別の対応優先度整理

ここで重要な前提として、各国の国内普及率と「海外旅行者が実際に使うアプリ」は必ずしも一致しない点を踏まえる必要があります。

国内では別のアプリを主に使っている旅行者であっても、海外渡航時には現地の施設との連絡や、異なる国籍の旅行者との会話のためにWhatsAppを活用するケースが広くみられます。パスポートを持って海外に出る旅行者は、渡航先での汎用的なコミュニケーションツールとしてWhatsAppを選択する傾向があります。また、WhatsAppはリンクから即座にダウンロードできる仕組みのため、来日後に初めてインストールして使い始めることも可能です。

こうした実態を踏まえると、WhatsAppはヨーロッパ・インド・東南アジア・中東・ブラジルといった本来の強固な普及市場に加え、韓国・中国を含む海外旅行者全般に対しても有効なチャネルとして機能します。

実務的な優先判断として、WhatsAppを基盤チャネルとして整備することが、最も広い市場カバレッジを効率的に実現する手段といえます。訪日外国人消費額の上位を占めるヨーロッパ5カ国(ドイツ・英国・スペイン・フランス・イタリア)はいずれもWhatsApp一強の市場であり、加えて韓国・中国・インド・北米からの旅行者も含め、海外渡航者という文脈ではWhatsAppが事実上のグローバル共通チャネルとして機能しています。

4. チャネル整備における実務上の留意点

各アプリへの対応には、アカウント開設・多言語対応・24時間応答体制の整備が伴います。特に人員リソースが限られた中小観光施設において、複数チャネルを同時に手動で管理することには構造的な限界があります。

WhatsAppについてはBusiness APIを通じた自動応答の仕組みが整備されており、AIを活用した多言語対応・24時間応答が実装可能です。訪日旅行者という文脈では、国籍を問わずWhatsAppが事実上の共通チャネルとして機能するため、WhatsApp一本を基盤として整備することで広範な市場をカバーできます。

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