2026-09-01
OTA依存を減らし、直販比率を上げるには。観光事業者が整えたい3つの予約体験
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作者:ikura インバウンド総合研究所 沼田
OTA(Online Travel Agent, オンライン旅行代理店)は、自社だけでは届かない客層に施設を見つけてもらうための、有効な販売チャネルです。一方で、OTA経由の予約には手数料などの販売コストが発生するため、販売構成によっては収益性に影響します。
ただし、OTAをやめて直販だけにする、という話ではありません。現実的には、OTAで新しい旅行者との接点をつくりながら、自社予約での直販の割合を少しずつ増やしていくのが良いでしょう。
そのためには、まず自施設がOTA経由の予約にどのくらいのコストをかけているのかを把握することが必要です。しかし、OTAの手数料率は一般には公表されていないことが多く、外から正確な水準を把握するのは簡単ではありません。
今回は、公開されている大手OTAの資料から収益構造の一端を確認しながら、直販を増やすために事業者ができることを考えます。
手数料率は、多くのOTAで公表されていない
体験・アクティビティ系のOTAをはじめ、多くのプラットフォームは手数料率を一般に公開していません。実際の条件は、事業者ごとの契約内容や販売プラン、取扱高によって異なります。
そのため、自社に適用されている料率は、管理画面や契約書で確認する必要があります。
インターネット上にはさまざまな手数料率が掲載されていますが、出所や前提条件が一定ではありません。自施設の判断材料にするのであれば、まず実際の契約条件を確認することが出発点です。
上場企業の開示資料から見えるOTAの収益構造
一方で、米国の大手OTAの一部は、決算資料の中に取扱高と売上を開示しています。ここの施設が支払っている手数料率を知ることはできませんが、プラットフォーム全体がどの程度の規模で収益を得ているのかを知る参考にはなります。
Expedia Group(Expedia、Hotels.com、Vrboなどを運営)の2025年12月期決算資料によると、宿泊事業の総取扱高は872億6,500万ドル、宿泊事業の売上は117億5,200万ドルでした[1]。
Expedia Groupでは、旅行者から代金を受け取り、宿泊施設などへの支払額との差額を売上とする「マーチャントモデル」と、予約を仲介して手数料を受け取る「エージェンシーモデル」など、複数の収益モデルを採用しています[2]。

また、Vrboでは旅行者側からサービス料を受け取る場合もあります。つまり、宿泊事業の売上すべてが、施設側の負担によって生まれているわけではありません。
同社は、会社全体の売上を総取扱高で割った数値をRevenue marginとして開示しており、2025年第4四半期は13.1%、第3四半期は14.4%でした[1]。なお同社は、売上を総取扱高で割った数値をRevenue marginとして開示し、2025年第4四半期は13.1%、第3四半期は14.4%でした[1]。
Booking Holdings(Booking.com、Agodaなどを運営)についても、2025年12月期の総取扱高は1,861億ドル、売上は269億ドルと開示されています[3]。同様に計算すると、およそ14.5%になります。
こちらもBooking.comの宿泊施設向け手数料率を示す数字ではありません。Booking Holdings全体の数値であり、宿泊以外の旅行商品なども含まれています。
そのため、これらの数字だけを見て「OTAの手数料は13〜15%程度」と判断するのは適切ではありません。自施設にとっての正確な販売コストを把握するには、実際の契約条件や予約実績を確認する必要があります。
料率の交渉より、予約の構成を見直す
OTAの料率そのものを個別に引き下げる交渉には、限界があります。一方で、予約全体に占めるOTA経由の比率を下げることは、事業者側の工夫で進められる部分です。
ただし、「OTA予約を直販に置き換えれば、その分だけ利益が増える」というほど単純ではありません。
直販にも、予約システム、決済手数料、広告、Webサイトの運営、問い合わせ対応などのコストがかかります。大切なのは、OTAと直販それぞれにどれくらいの販売コストがかかっているのかを把握し、自社に合ったバランスを考えることです。
そして、直販を増やすために必要なのは、単に自社サイトへ旅行者を呼び込むことではありません。
旅行者が自社サイトにたどり着いたとしても、そこで予約に進むための判断に必要な情報が得られなければ、予約には至りません。特に訪日旅行者の場合、自分の言語で書かれた説明があるか、疑問が生じたときに問い合わせられる窓口があるか、その場で決済まで完了できるかといった点が重要で、それらが整備されていないと離脱につながってしまいます。
OTAが提供しているのは、単なる掲載枠だけではありません。多言語の商品説明、24時間の問い合わせ窓口、決済手段、キャンセル条件の明示といった、旅行者が予約を完了するために必要な仕組みが一通り揃っています。
OTAでは、旅行者は施設を探し、比較し、空室や在庫を確認し、そのまま予約・決済まで進めます。
ところが、自社サイトに移った途端に情報が足りなくなったり、問い合わせがメールだけになったり、予約や決済の手順が複雑になったりすると、旅行者にとってはOTAへ戻る方が簡単です。
つまり、直販比率を上げるということは、価格だけでOTAと差をつけることではなく、自社でも迷わず予約を完了できる体験を整えることでもあります。
自社側で用意したい三つの要素
一つ目は、多言語での情報整備です。
施設概要、料金、所要時間、料金に含まれるもの、キャンセル規定といった、旅行者が予約前に確認したい情報を、対象とする市場の言語で用意します。ここが不足していると、旅行者は情報が揃っているOTAへ戻ってしまいます。
単に日本語ページを翻訳するだけではなく、海外旅行者が実際に予約前に知りたい情報まで揃えておくことが大切です。
例えば、最寄り駅や空港からのアクセス、荷物を預けられる時間、子どもの参加条件、食事制限への対応、遅い時間のチェックイン、支払い方法などです。
二つ目は、問い合わせへの応答体制です。
子ども連れでも参加できるか、食事制限に対応できるか、到着が遅れた場合どうなるかといった、個別の疑問が生じます。訪日旅行では時差の関係で、日本の営業時間外に問い合わせが届くことも少なくありません。旅行者が複数の施設や体験を比較している段階で、必要な回答がなかなか得られなければ、別の候補を選ぶ可能性もあります。
直販を増やすためには、問い合わせ窓口を設けるだけでなく、言語や時間帯にかかわらず、旅行者が必要な情報を得られる状態をつくることが重要です。
三つ目は、予約・決済までのスムーズな導線です。
問い合わせに回答できても、そこから別の予約フォームから手続きしたり、メールでのやり取りに戻る設計では、旅行者が離脱してしまう可能性が高まります。
疑問が解消されたタイミングで、そのまま予約や決済まで進めれば、旅行者は途中で別のサービスや画面を行き来する必要がありません。
多言語での情報提供、問い合わせ、予約、決済を、一つにつながった予約体験として設計することがポイントです。
段階的に進めるという考え方
これらを一度に整えるのは、限られた人員では現実的ではありません。優先順位をつけるとすれば、まず自社サイトの多言語での情報整備、次に問い合わせへの応答体制、その後に決済導線の整備という順序が取り組みやすいと考えられます。
あわせて、直販比率そのものだけを見るのではなく、OTA経由と直販それぞれで、予約1件を獲得するためにどれくらいのコストがかかっているかを確認することも大切です。
OTAをやめる必要はありません。OTAで新規の旅行者に見つけてもらい、そこで得た知見をもとに自社の予約体験を整え、直販の比率を少しずつ引き上げる。この二本立てが、コスト負担と集客力のバランスを取る現実的な進め方になります。
問い合わせから予約までを自社で受け止めるために
私たちikuraは、このうち問い合わせへの応答と、そこから予約・決済までをつなぐ部分を支援しています。
ikuraの「AIインバウンド担当」はWhatsAppと連携し、訪日外国人からの問い合わせ、提案、予約、決済に50ヵ国語で24時間対応する多言語AIエージェントです。WhatsAppは世界で30億人を超える人々に利用されており[4]、海外の旅行者にとっては普段使いのメッセージアプリのまま、施設へ直接質問できる状態をつくれます。施設が持つ情報をもとに個別の質問へ回答し、スタッフの営業時間外にも旅行者との接点を維持します。
まずは自社サイトに来た旅行者が、疑問を抱えたまま離脱していないかを確認してみてはいかがでしょうか。
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出典
[1]Expedia Group, Inc.「Expedia Group Reports Fourth Quarter and Full Year 2025 Results」
2026年2月12日発表。2025年12月期(2025年1月1日から12月31日まで)の実績。宿泊事業の取扱高・売上、およびRevenue marginは同資料のTrended MetricsおよびSegment P&Lの表を参照。同社はRevenue marginを、売上が総取扱高に占める割合として定義している。なお同社の定義では、宿泊の取扱高は予約時点、宿泊の売上は宿泊完了時点で計上されるため、両者には期ずれが生じる。
https://s202.q4cdn.com/757635260/files/doc_financials/2025/q4/Earnings-Release-Q4-2025_FINAL.pdf
[2]Expedia Group, Inc. Form 10-K(2025年12月期)
米国証券取引委員会(SEC)提出。収益認識に関する記載を参照。マーチャントモデルにおける宿泊売上は、サプライヤーへの支払額を差し引いた純額で認識される。エージェンシーモデルでは、旅行サプライヤーまたは旅行者、あるいはその双方から手数料を受け取ると記載されており、売上のすべてが施設側の負担分とは限らない点に留意が必要。
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1324424/000132442426000008/expe-20251231.htm
[3]Booking Holdings Inc.「Fourth Quarter and Full Year 2025 Financial Results」
2026年2月18日発表。2025年12月期(2025年1月1日から12月31日まで)の実績。総取扱高1,861億ドル、売上269億ドル。同社は商品別の内訳を開示していないため、宿泊以外の商品や広告収入を含む全体値である。
https://s201.q4cdn.com/865305287/files/doc_financials/2025/q4/Q4-25-BKNG-Earnings-Release.pdf
[4]Meta, "It's Time to Reserve Your WhatsApp Username"
2026年6月29日公開。WhatsAppの利用者が世界で30億人を超えることを記載。
https://about.fb.com/news/2026/06/its-time-to-reserve-your-whatsapp-username/



