2026-08-26
深夜の問い合わせ、翌朝までそのままにいませんか?インバウンド対応に必要な24時間返信体制のつくり方

作者:ikura インバウンド総合研究所 沼田
インバウンドのお客様を受け入れている施設では、深夜に海外からの問い合わせが届くことがよくあります。
ただ、施設が問い合わせに気がついた頃には、旅行者はすでに別の宿泊施設や体験の予約を終えているということもあります。こうしたケースは、その後返信をしても予約につながらないことがあるため、現場では失注、機会損失として把握しにくいのが実情です。
訪日外国人旅行者からのタビマエの問い合わせは、時差によって日本時間の深夜から早朝に集中する傾向があります。旅行者は一つの施設だけを見ているとは限らず、複数の候補を比較しながら、料金や空き状況、アクセス、参加条件などを確認しています。日本の施設が翌営業日に返信をする前に、別の施設で予約を完了させてしまうことが少なくありません。
だからこそ、深夜や早朝の問い合わせにどう対応するかということは、スタッフの対応力ではなく、受付体制そのものの設計課題として見直す必要があります。
問い合わせへの対応のスピードも、予約体験の一部
インバウンドの問い合わせ対応には、国内客とは異なる構造的な難しさがあります。まずあげられるのが、時差です。欧米をはじめとした日本と大きな時差のある地域からの訪日旅行を計画している人が問い合わせをする時間帯は、日本時間の深夜から早朝が多く、日本では営業時間外にあたります。翌朝の業務開始時点ですでに少なくとも数時間が経過しているというのが実情です。
また、予約直前の問い合わせは、旅行者にとって「最後に確認しておきたいこと」である場合が少なくありません。
「子どもも参加できますか」
「食物アレルギーに対応できますか」
「大きな荷物を預けられますか」
「到着が遅くなっても大丈夫ですか」
こうした疑問に答えが得られなければ、旅行者は別の候補へ移ってしまう可能性があります。
重要なのは、すべての問い合わせに数分以内で返事をすることではありません。旅行者が必要な情報を必要なタイミングで得られず、予約をあきらめてしまう状態を減らすことです。
加えて、訪日旅行者が問い合わせに使うツールも変化しています。メールや電話だけではなく、日常的に使い慣れたWhatsAppなどのメッセージアプリから連絡が届くケースが増えています。一部の調査では、WhatsAppのメッセージ開封率は95〜98%にのぼる一方、メールの開封率は20〜25%程度にとどまるという報告がされており、(WizMessage「WhatsApp Business Statistics 2026」2026年3月)予約確認や事前案内、来場後のフォローなど、旅行者との接点を継続しやすいチャネルとして注目されています。
問い合わせが届くチャネルを把握できていなければ、返信が遅れるだけでなく、そもそも問い合わせに気づけないこともあります。どこから問い合わせが届き、誰がいつ対応するのかを整理しておくことは、インバウンド対応の基本になりつつあります。
現場が抱える構造的な矛盾
初動の速さ、その後の返信速度の重要性は分かっていても、それを実現する体制をつくるのは簡単ではありません。
宿泊業の有効求人倍率は2.53倍にのぼり、旅館・ホテルで正社員不足を感じる企業は60.2%に達しています(厚生労働省2025年6月、帝国データバンク2025年1月)。宿泊事業者の78%が従業員10名以下の小規模事業者です(観光庁「観光DX最終取りまとめ」)。そこに24時間・多言語の問い合わせが増え続けているのが現実です。
限られた人員で日々の接客や運営を行いながら、深夜・早朝の問い合わせや多言語対応まで担わなければならない。これが、多くの観光施設が直面している現実です。
人を増やせば解決できる、という単純な話ではありません。そもそも採用が難しい、多言語対応できるスタッフがいない、深夜や早朝のシフトを組む余裕がない。こうした課題が重なった状態で、増え続けるインバウンドの問い合わせに対応しなければいけない状況が、多くの現場で起きています。
体制をつくるために見直すべき3つのポイント
24時間の問い合わせ対応体制を整えるためには、まず現状の対応を整理する必要があります。
一つ目は、問い合わせがどのチャネルに来ているかを把握することです。メール・電話・予約サイトのメッセージ機能・WhatsApp・Instagramのダイレクトメッセージなど、訪日旅行者が使う経路は複数あります。それぞれの問い合わせにきちんと気づける状態になっているかを確認するのが最初の一歩です。
二つ目は、よく来る問い合わせの内容を整理することです。チェックイン時間・アクセス・食事制限・予約変更の方法など、繰り返し同じ質問が来るものはFAQ化や自動応答の対象になります。対応の型をつくることで、人が介在すべき問い合わせと自動化できる問い合わせを分けられます。
三つ目は、対応の優先順位を決めることです。予約直前の問い合わせと、旅行前の数ヶ月前の情報収集では、緊急度が異なります。全ての問い合わせを同じ優先度で扱うのではなく、予約につながる可能性が高い問い合わせから優先的に返信できる仕組みを整えることが重要です。

仕組みを変えることで、予約につながりやすくなった事例も
実際に、問い合わせから予約までの流れを見直したことで、数字に変化が表れた事例もあります。
インバウンド向けに「日本の田舎の学校体験」を提供する株式会社運動会屋では、ikuraの「AIインバウンド担当」を導入前、公式サイトからの予約比率は16%程度でした。
導入後は、WhatsApp上で質問から予約・支払いまで一貫して対応できる仕組みを整えたほか、Instagramからの問い合わせや、OTAでは対応しにくかった個別の日程相談などにも対応できるようになりました。
その結果、導入3か月後には、ikura経由の公式サイトからの予約比率が約60%となりました。直販の増加によって価格設定の自由度も高まり、同社によると利益率も約30%改善しています。
もちろん、すべての施設で同じ結果が出るわけではありません。
ただ、この事例から見えてくるのは、問い合わせ対応を単なる業務効率化として考えるのではなく、予約までの流れそのものとして設計することの大切さです。
AIによる自動応答は24時間対応体制をつくる有力な選択肢
よくある問い合わせを整理し、人が対応すべき内容を決めた上で、営業時間外や外国語での問い合わせをAIによる自動応答で補う方法が、現在多くの施設で選ばれています。
観光庁の2024年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関する調査」(4,189件)では、旅行中に困ったことが何もなかったと答えた割合が増加しており、受入環境の改善が進んでいることが確認されています。一方で「コミュニケーション」に関する困りごとは依然として上位にあり、言語対応の課題が残っていることも示されています(観光庁、2025年4月18日発表)。
スタッフが英語を話せなくても、AIが50ヵ国語で対応できれば、言語の壁で機会を失う状況を減らせます。深夜に届いた問い合わせを翌朝まで放っておく、という事態も防ぎやすくなります。
ikuraが提供する「AIインバウンド担当」は、WhatsAppと連携し、訪日外国人からの問い合わせ、予約、決済、来場後のフォローまでを50言語で24時間自動対応するAIエージェントです。Meta社(WhatsApp)のテックプロバイダーとして、来場前から来場後まで一貫した対応を支援します。
24時間体制は、もはや大きな施設だけのものではありません。まずは自施設の問い合わせ対応の現状を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
参照
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年6月分)」(2025年6月): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59944.html
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250221-laborshortage202501/
- 観光庁「観光DX推進による観光地の再生と高度化に向けて(最終取りまとめ)」: https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/jizoku_kankochi/kanko-dx/content/001596701.pdf
- 観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました」(2025年4月18日発表): https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00022.html
- WizMessage「WhatsApp Business Statistics 2026」(2026年3月): https://wizmessage.com/blog/whatsapp-business-statistics
- Dr. James Oldroyd、MIT Sloan School of Management / InsideSales.com「Lead Response Management Study」(2007年): https://www.onecavo.com/wp-content/uploads/2015/11/MIT-InsideSales.com_Lead-Response-Management.pdf
- ikura導入事例(株式会社運動会屋様): https://www.ikura.io/testimonials
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