2026-09-15
訪日客の滞在短縮と消費拡大の背景。データで見る体験・食の機会と対応策

作者:ikura インバウンド総合研究所 沼田
訪日旅行者の滞在期間が、少しずつ短くなる一方で、1日あたりに使う金額が増加しています。この二つが同時に起きているということは、旅行者の限られた時間の使い方に変化があることが読み取れます。
本稿では、旅行者が何にお金を使うようになっているのかを費目別のデータで確認したうえで、食や体験を提供する事業者が今後どのような受け入れ体制を整えられるかを考えます。
滞在は短くなり、支出は増えている
観光庁の調査によると、2026年4〜6月期の訪日外国人1人当たりの旅行支出は24万4,457円で、前年同期比3.3%増となりました。一方、平均泊数は8.7泊で、前年から0.7泊減少しています[1]。
滞在日数が減り、支出が増えているということは、1日あたりに使う金額が増えているということです。同期間の1人1泊当たりの旅行支出は2万8,222円と推計されています。観光・レジャー目的に限ると3万4,058円で、さらに高い水準です[1]。
限られた滞在日数の中で、何に投資するかという旅行者の選択基準がシフトしつつあると考えられます。
宿泊費の比重が下がり、食と体験の比重が上がっている
費目別の構成比を見れば、その変化は明白です。
2026年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額の構成比は、宿泊費が37.0%で最も多く、次いで買物代26.8%、飲食費21.7%、交通費10.1%、娯楽等サービス費4.3%でした。観光庁は、2025年同期と比べて飲食費、娯楽等サービス費、買物代の構成比が増加したとしています[1]。
前年同期と並べると、宿泊費は38.5%から37.0%へ下がり、飲食費は21.0%から21.7%へ、娯楽等サービス費は4.1%から4.3%へ、買物代は26.1%から26.8%へ上がっています[1]。
単に泊まる場所にお金をかけるのではなく、滞在中に何を食べ、どんな特別な体験をするかへ予算の配分がシフトしていることが伺えます。
市場(国・地域)によって際立つ「食と体験」への消費格差
金額で見ると、全体の1人当たりの飲食費は5万3,143円、娯楽等サービス費は1万598円です[1]。
しかし、市場別に見ると、この2つの費目には大きな開きがあります。飲食費が高いのは英国の10万6,005円、メキシコの9万7,931円、北欧地域の8万7,640円、中東地域の8万7,241円、オーストラリアの8万3,133円などです。娯楽等サービス費では、メキシコが3万3,366円、オーストラリアが2万7,031円、米国が2万2,559円、英国が2万2,307円と続きます[1]。
いずれも欧米豪や中東の高単価市場が上位に並びます。これらの市場は1人当たりの旅行支出そのものも高く、メキシコが51万5千円、中東地域が48万3千円、英国が45万6千円と、全体平均の24万4千円を大きく上回っています[1]。なお、メキシコ、中東地域、北欧地域は2026年の調査から新たに対象に加えられた市場です[1]。

食と体験に多くを使う旅行者は、日本語はもちろん英語以外を母語とする層も含めて広がっているということになります。
娯楽等サービス費は、まだ全体の4.3%
ただし、注意しておきたい点があります。
娯楽等サービス費の構成比は増加しているとはいえ、全体では4.3%にとどまります[1]。金額でも1人当たり1万598円で、宿泊費9万482円や買物代6万5,425円と比べると、まだ小さい規模です[1]。
体験への支出が伸びていると言われる一方で、実際の支出額はまだこの水準です。裏を返せば、旅行者が滞在中に体験へ使える余地は残っているとも考えられます。ここをどう受け止めるかが、体験を提供する事業者にとっての論点になります。
限られた滞在時間を自施設に使ってもらうための3つの条件
旅行者の滞在が短くなり、判断のスピードが加速する状況において、事業者が取り組むべきポイントは以下の3点です。
- 明確な所要時間と参加条件の提示
行程を組む段階で、旅行者が真っ先に確認するのは所要時間です。「半日かかるのか2時間で終わるのか」で1日のスケジュール設計が変わります。どんなに魅力的でも、所要時間や参加人数・年齢制限が不明確な場合、多忙な旅行者は検討候補から即座に外してしまいます。 - 対応可能なことと対応できないことの事前明記
食を提供する際、アレルギー、食事制限、宗教上の理由への配慮は不可欠です。大切なのは、対応可能なメニューだけでなく対応できないことも明確に示すことです。現地到着後に発覚した場合、旅行者は貴重な食事の機会と時間を一度に失うことになります。 - 滞在中の問い合わせにその場で応える体制
旅行中の行程は、事前予約だけでなく現地での気付きや予定変更によって柔軟に組み替えられます。「滞在中のふとした疑問にその場で答え、予約・決済まで即座に完了できる体制」があれば、旅行者の空き時間を自施設で埋めることができます。逆に返答が翌営業日になれば、その旅行者はすでに別の場所へ移動しています。
滞在が短いほど、判断のスピード感が高まります。「情報をあらかじめ精緻に出しておくこと」と「疑問にその場で答えられる状態を作ること」の2つが、選ばれるための必須条件です。
滞在中の問い合わせを受け止める体制について
私たちikuraは、このうち旅行者からの問い合わせに応答し、そこから予約・決済までをつなぐ部分を支援しています。
ikuraの「AIインバウンド担当」はWhatsAppと連携し、訪日外国人からの問い合わせ、提案、予約、決済に50ヵ国語で24時間対応する多言語AIエージェントです。WhatsAppは世界で30億人を超える人々に利用されており[2]、旅行者は普段使いのメッセージアプリのまま、滞在中でも施設へ直接質問できます。施設が持つ情報をもとに個別の質問へ回答し、スタッフの営業時間外にも接点を維持します。
まずは自施設の体験や食の情報が、旅行者が判断できる具体性で公開されているかを確認してみてはいかがでしょうか。
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出典
[1]観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)の結果について」 2026年7月15日発表。全国の数値。費目別構成比は同資料の図表2、国籍・地域別の1人当たり費目別旅行支出は図表5、1人1泊当たりの旅行支出は同資料の参考1および参考2を参照。平均泊数は入国日と出国日から算出されている。メキシコ、北欧地域、中東地域は2026年調査から新たに対象に加えられたため、前年同期比は算出されていない。 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002011761.pdf
[2]Meta, "It's Time to Reserve Your WhatsApp Username" 2026年6月29日公開。WhatsAppの利用者が世界で30億人を超えることを記載。 https://about.fb.com/news/2026/06/its-time-to-reserve-your-whatsapp-username/


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