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2026-09-26

地方の事業者が、海外の旅行者と直接つながるために整えたいこと

作者:ikura インバウンド総合研究所 沼田

インバウンド市場において「訪日客は東京・大阪・京都に集中する、と長く言われてきました。しかし直近の統計を見ると、その構図は少しずつ変わり始めています。

2026年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画(第5次)では、地方部の外国人延べ宿泊者数の目標として「1.3億人泊」が新たに設定されました。単に全体の人数を追うだけでなく、「旅行者をどこに迎えるか」という需要分散の視点が、国の方針として明確に打ち出されたことになります[1]。

ただし、国が目標を設定したからといって、地方の施設に自動的に旅行者がやってくるわけではありません。本稿では、地方部のインバウンドがいま実際にどう動いているのかをデータで確認したうえで、地方の事業者が海外の旅行者と直接つながるために何が必要かを整理します。

地方部の伸びは、三大都市圏の3倍以上

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、2025年の外国人延べ宿泊者数は1億7,992万人泊で、前年比9.4%増となりました[2]。

特に注目すべきは、地方部の伸びです。東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県からなる三大都市圏が1億1,936万人泊で前年比5.1%増だったのに対し、それ以外の地方部は6,056万人泊で前年比19.1%増でした[2]。

伸び率で比較すると、地方部は三大都市圏の3倍を超えるペースで成長していることになります。いわゆるゴールデンルートに集中していた需要が、着実に地方へ広がり始めていることが統計上からも伺えます。

一方で、目標達成への道のりはまだ半ばです。地方部の現在の水準は6,056万人泊であり、第5次計画が掲げる1.3億人泊は、その2倍以上です。伸びが続いているとはいえ、現状の取り組みの延長線上で自然に到達できる数字ではありません。

いま伸びているのは、どの市場か

地方部のみに限定した国・地域別の宿泊統計は、月次の統計では公表されていません。そのため、ここでは全国の数字から、拡大している市場の傾向を確認します。

観光庁の調査によると、2026年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額を国・地域別に見た場合、前年同期比でインドが43.9%増、インドネシアが40.4%増、マレーシアが39.8%増、フランスが21.6%増、シンガポールが20.1%増となりました[3]。南アジア・東南アジアおよび欧州の一部で、強い消費拡大が続いています。

一方、1人当たりの旅行支出に目を向けると、異なる市場が上位に浮上します。同期間の1人当たり支出は、メキシコ(51万5千円)、中東地域(48万3千円)、英国(45万6千円)、オーストラリア(42万7千円)、フランス(42万3千円)となり、全体平均(24万4千円)を大きく上回っています[3]。(※メキシコ、中東地域、北欧地域は2026年調査より新たに追加された市場[3])

いずれも全国の数字であり、そのまま地方部に当てはまるわけではありません。ただし、消費額が伸びている市場と、1人当たりの支出が高い市場は必ずしも一致しないこと、そしてそのどちらにも日本語や英語以外を母語とする旅行者が多く含まれることは、受け入れ体制を考えるうえで押さえておきたい点です。

地方の施設が直面する「二つの壁」

インバウンドの地方分散は大きなチャンスである反面、地方の事業者にとっては二つの大きなハードルが存在します。

  1. 認知の壁
    旅行者が事前に得られる情報が少なければ、そもそも訪問先の候補に入りません。宿泊予約サイトや旅行メディアで露出を高めるには、多言語での情報整備や日常的な運用の手間がかかります。限られた人員でそこまで手が回っている施設は多くありません。

  2. 対応の壁
    宿泊業の有効求人倍率は2.53倍にのぼり[4]、旅館・ホテルで正社員不足を感じる企業は60.2%に達しています[5]。また、宿泊事業者の78%は従業員10名以下の小規模事業者です[6]。いずれも全国の数字ですが、採用の難しさは地方でより大きいと考えられます。多言語対応ができる専任スタッフを置く余力は、多くの施設にありません。

見つけてもらう難しさと、見つけてもらった後に応えきれない難しさ。この二重の課題が重なることで、せっかくの訪日需要を取りこぼしてしまう構造が生まれています。

地方の事業者が整えたい三つのこと

この課題を克服し、海外旅行者と直接つながるために必要な取り組みを3つのステップで整理します。

  • Step 1:自施設の情報をターゲット言語で発信する アクセス方法、最寄り駅からの所要時間、食事内容、周辺のアクティビティなど、行程を組むために不可欠な情報をターゲット市場の言語で公開します。地方への訪問は旅行全体のルート選定に直結するため、移動時間や滞在中の過ごし方がイメージできない場合、旅行者は情報が整っている別の地域を選んでしまいます。
  • Step 2:旅行者の「不安」を事前に解消する 初めて訪れる見知らぬ土地、かつ言葉が通じないかもしれない場所に対して、旅行者は大きな不安を抱えています。「到着が遅れた場合の対応」「アレルギーや食事制限への配慮」「荷物預かりの可否」といった疑問に事前の情報発信で答えておくことが、予約を後押しする鍵となります。
  • Step 3:直接やり取りできるコミュニケーション窓口を設ける 予約サイトや旅行会社を経由したやり取りでは、細かな質問が施設まで届かないことがあります。また、質問が届いたとしても時差や営業時間の都合で回答が遅れれば、旅行者はすぐに他の施設へ流れてしまいます。

都市部であれば、旅行者は複数の候補を比較しながら決めることができます。一方で地方の場合、旅行者は限られた情報の中で、その地域に行くかどうかから判断しています。施設が直接答えられる状態にあるかどうかは、地域そのものが選ばれるかどうかにも関わってきます。

順序をつけるとすれば、まず情報の整備、次に不安を減らすための情報の追加、その後に直接の問い合わせ窓口という流れが取り組みやすいと考えられます。地方部の伸びが続いている今は、その体制を整える時期として適していると考えられます。

問い合わせを受け止める体制について

私たちikuraは、このうち旅行者からの問い合わせに応答し、そこから予約・決済までをつなぐ部分を支援しています。

ikuraの「AIインバウンド担当」はWhatsAppと連携し、訪日外国人からの問い合わせ、提案、予約、決済に50ヵ国語で24時間対応する多言語AIエージェントです。WhatsAppは世界で30億人を超える人々に利用されており[7]、海外の旅行者にとっては普段使いのメッセージアプリのまま、施設へ直接質問できる状態をつくれます。スタッフの営業時間外にも、施設が持つ情報をもとに個別の質問へ回答します。

まずは自施設の情報が、増えている市場の言語で公開されているかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

無料デモ・お問い合わせはこちらから👇 https://www.ikura.io/

出典

[1]観光庁「『観光立国推進基本計画』を閣議決定」 2026年3月27日発表。計画期間は2026年度から2030年度までの5年間。地方部の外国人延べ宿泊者数1.3億人泊のほか、訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円、地方部への訪問意欲が高いリピーター4,000万人、旅行消費単価25万円が目標として設定されている。計画本文は内閣官房のページに掲載。 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00077.html https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/kankorikkoku/kettei/shiryo21.pdf

[2]観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年(令和8年)4月・第2次速報、2026年(令和8年)5月・第1次速報及び2025年(令和7年)年間値(確定値))」 2026年7月6日発表。2025年1月から12月までの年間確定値。三大都市圏および地方部の内訳は同資料の集計結果を参照。三大都市圏は東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県、地方部はそれ以外の道県を指す。 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00090.html

[3]観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)の結果について」

2026年7月15日発表。全国の数値であり、地方部に限定した集計ではない。国・地域別の消費額の伸び率および1人当たり旅行支出は、同資料の図表1、図表4、図表5を参照。メキシコ、北欧地域、中東地域は2026年調査から新たに対象に加えられたため、前年同期比は算出されていない。

https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/002011761.pdf

[4]厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年6月分)」 宿泊業・飲食サービス業(接客・給仕職業従事者)の有効求人倍率。全国の数値。業種別データは同資料内の図表を参照。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59944.html

[5]帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」 旅館・ホテルにおける正社員不足の割合。全国の数値。業種別データは同レポート内の図表を参照。 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250221-laborshortage202501/

[6]観光庁「観光DX推進による観光地の再生と高度化に向けて(最終取りまとめ)」 2023年3月公開。全国の宿泊事業者に関する数値。 https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/jizoku_kankochi/kanko-dx/content/001596701.pdf

[7]Meta, "It's Time to Reserve Your WhatsApp Username" 2026年6月29日公開。WhatsAppの利用者が世界で30億人を超えることを記載。 https://about.fb.com/news/2026/06/its-time-to-reserve-your-whatsapp-username/

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